牢屋敷ろうやしき)” の例文
それは名を喜助きすけと言って、三十歳ばかりになる、住所不定じゅうしょふじょうの男である。もとより牢屋敷ろうやしきに呼び出されるような親類はないので、舟にもただ一人ひとりで乗った。
高瀬舟 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
一、二年伝馬町の牢屋敷ろうやしきで涼みをさせてやらあ。——伝六ッ、伝六ッ、いいぐあいにつじ番所の連中が来たようだ。こののっぺりした三的を渡してやんな。
右門捕物帖:23 幽霊水 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
高瀬舟たかせぶねは京都の高瀬川たかせがわ上下じょうげする小舟である。徳川時代に京都の罪人が遠島えんとうを申し渡されると、本人の親類が牢屋敷ろうやしきへ呼び出されて、そこで暇乞いとまごいをすることを許された。
高瀬舟 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
しきりと伝六が敬四郎に食ってかかっているのを、右門はあごをなでながら黙ってにやにややっていましたが、なに思ったかふいッとそこを立ち去ると、どんどん牢屋敷ろうやしきのほうへやって参りました。