燻蒸くんじょう)” の例文
馬丁べっとうの黒助は立上がって、番手桶の水をザブリと掛けました。初秋の肌寒い風が、半裸の美女を吹いて、そのまま燻蒸くんじょうする湯気も匂いそうです。
情熱に燻蒸くんじょうすると、曾て半十郎の許婚いいなずけだった繁代——あの稲富喜太夫の娘で喜三郎の妹だった繁代に、何んとなく似通ったところのあるのに気が付いたのです。
江戸の火術 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
それはさながら、片瀬の浜の空気を桃色に燻蒸くんじょうするような妖しくもなまめかしい風景だったのです。
押し潰されたような女の声、昌平橋をバタバタと渡って、平次に突き当たるように、わずかにかわされて、前のめりに、続く八五郎に抱きついたのは、夜の空気を桃色に燻蒸くんじょうするような若い女です。