無音ぶいん)” の例文
博士問題に関して突然余の手元に届いた一封の書翰は、実にこの隠者が二十余年来の無音ぶいんを破る価ありと信じて、とくに余のためにしたためてくれたものと見える。
「ところが、そのおやかたもさっぱり無音ぶいんだ。地方じかた(本土)の戦乱はよほど大きくでもなっているのか」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
無音ぶいんのかしわ手……。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
『——話し好きな年老としよりでな、それに、五、六年ほど、無音ぶいんのまま会わなかったのだから、離さぬのだ。済まないが、一足先きに行ってくれないか、宿をめておいて、晩方ばんがた、落ち合おう』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「十年の久しいあいだ、お便りもせず無音ぶいんの罪、おゆるし下さい。人目には、出世と見ゆるか存ぜぬが、まだまだ、小次郎の志望は、これしきのことに、満足するものではごさいませぬ。——それゆえに、つい故郷ふるさとへも」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)