無名ななし)” の例文
ここ、小梨平、無名ななしの沼のほとりに立てられた鐙小屋は、いつの世、誰によって、何の目的のために立てられたかわからないが、今でも人が住んでいる。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その草原から放生湖の方に流れている無名ななし水の蘆の茂った水溜で、沢蟹を追っかけていた五六人の小供の群は、何時の間にか祠の前へ来ていくさごっこをしていたが
放生津物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
無名ななしの沼を越えて、かなりの山路をのぼって行かなければならないのです……乗鞍ヶ岳も好きですが、焼ヶ岳の煙を見ることも、わたしはいやではありません。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
無名ななしの沼のほとりを、あぶらぎった後家婆さんと、竜之助とは、ブラブラと歩いて行きました。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
無名ななしの沼の岸を机竜之助は金剛杖をついてではない、それを提げて——静かに歩んで行くと、不意にくうを切って飛んで来たつぶてが、鏡のように静かで、そして透き通る無名ななしの池の中に落ちて
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)