溺死者できししゃ)” の例文
お客さんというのは溺死者できししゃのことを申しますので、それは漁やなんかに出る者は時〻はそういう訪問者に出会いますから申出もうしだした言葉です。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
蒼黒あおぐろくむくんだ、溺死者できししゃのような相貌になり、手足は極端にまで痩せ、まぶた指趾ししは絶えず顫戦せんせんし、唇からはよだれが垂れた。
山彦乙女 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
危機はいかにも切迫し、覆滅はいかにも避け難くはあったけれども、水中に恐ろしい目を見張る溺死者できししゃのような苦悶くもんのさまは、少しも現われていなかった。
それでも思いっ切りアルプスの絶頂に乗り上ったとき、溺死者できししゃが両手を振っているように、揺られに揺られている二本のマストだけが遠くに見えることがあった。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)