渡御とぎょ)” の例文
……が、それにしても、渡御とぎょの道筋の両側に隙間なく桟敷を結って、何千という人目がある。しかも、真ッ昼間。
だからおなじ蒙塵もうじん(天子の御避難)でも、今日の恐怖は、往時むかしの比ではない。——賢所かしこどころ渡御とぎょ(三種ノ神器の移動)を忘れなかったのがやっとであった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これは浜脇にある金刀比羅ことひら神社の神体が海上を渡御とぎょしているところであった。
別府温泉 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
というのは、ご存じでもありましょうが、府中の暗闇祭というのは、御神輿の渡御とぎょするあいだ、府中の町じゅうひとつの灯火もないようにまっ暗にしてしまう。
顎十郎捕物帳:23 猫眼の男 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
はやくも、内侍所ないしどころ玉璽ぎょくじを移して、ふたたび、主上を叡山へ渡御とぎょしまいらすことであたまも智恵もいっぱいだった。また、いまとなっては、どう義貞を譴責けんせきしてみたところで始まらない。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
渡御とぎょ、おねりのほうは、これでどうやら事なくすんだが、これから先がたいへん。