毛鈎けばり)” の例文
若鮎が、毛鈎けばりをくわえたのだ。軽く鈎合わせをする。掛かった鮎を、そのまま大笊の上へ持ってきて振り落とす。
母の匂い (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
鮎の最も好きな水垢が豊富に石についてゐるにも拘はらず、毛鈎けばりを下げればその鈎へ食ひついて来る。これ等のことも、鮎自身でなければ判らぬ領分だ。
水垢を凝視す (新字旧仮名) / 佐藤垢石(著)
そこには、数多い山女魚やまめが棲んでいて、毛鈎けばりの躍るを追い回す。殊に熊川渓谷の銀山女魚の味は絶品だ。
わが童心 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
だから、その頃まだ加賀国や土佐国で巻く精巧な毛鈎けばりが移入されなかった奥利根川の釣り人は、播州鈎や京都鈎に藻蝦の肉を絞り出し、餌としてつけたのであった。
父の俤 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
羽虫に似た毛鈎けばりを繰り、上下の対岸から手前の方下流へ、チョンチョンチョン、水面を叩きながら引き寄せるうち、ガバと水をわって躍り出す山女魚の姿を見るのは
雪代山女魚 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
鮎は、毛鈎けばりや友鈎で掛けるばかりでなく、餌に食いつくのは、誰も知っている。
石亀のこと (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)