櫛屋くしや)” の例文
そこから広小路ひろこうじへ出るところに、十三屋という櫛屋くしやがあって、往来ばたに櫛の絵を画いた、低くて四角な行灯あんどんが出してありました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
十三屋の櫛屋くしやの前に、艶歌師がヴァイオリンを弾いていた。みどりもふかきはくようの……ほととぎすの歌だ。随分古めかしい歌をうたっている。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
まだ並んでいる家の中で、店を開けて商売をしているのは蕎麦屋そばやの蓮玉庵と煎餅屋せんべいやと、その先きのもう広小路の角に近い処の十三屋と云う櫛屋くしやとの外には無かった時代である。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
ガラスのすだれを売る店では、ガラス玉のすれる音や風鈴ふうりんの音が涼しい音を呼び、櫛屋くしやの中では丁稚でっちが居眠っていました。道頓堀川の岸へ下って行く階段の下の青いペンキ塗の建物は共同便所でした。
アド・バルーン (新字新仮名) / 織田作之助(著)