かしは)” の例文
かしはやナラの葉の、赤い色が褪せて、乾反ひぞになつてしまつてから、やうやく色づくのだと云はれるイタヤもみぢも、その一と角に既に眞ツ赤に紅葉してゐる。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
制したのだ——が數時間前にはまるで雷電がかしはの木に落ちたかのやうに彼に打撃を與へたのであらう?
町々はまだ春先の殘雪のために埋められ、とき/″\恐ろしげな地響きを立てゝ屋根から崩れ落ちる雪の音もするが、この雪に濡れて反つて光を増すかしはの葉などの輝くさまは眼もさめるばかり。
桃の雫 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
かしは木の枯葉ながらに立つ庭に繩もてゆひし木瓜あからみぬ
長塚節歌集:2 中 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
○○氏の如きがゐ坐わつてをつて北海道を歌つたのなどと來ては、實にお話にならん——かしはの木一つの形容でも、その葉が實際にどう光るかといふことを知つてをらん。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
旅行中に見たかしはの皮剥ぎ並びに澁取りの新事業や、アルコール製造場のことや、牧場や未墾地の遊んでゐるのが多いことや、火山灰の利用方法などを話すと、年若い春雄の心は踊つて
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
兎に角、北海道の紅葉はかしはでなければ、ナラだ。赤いよりは、黄ばみである。
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)