極秘裡ごくひり)” の例文
「知れようわけはない。もし漏れては、家中の異論や動揺まぬがれ難しと案じて、老臣衆が相計あいはかって、極秘裡ごくひりにお使者を甲州へったものらしい」
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ことに博士が所長を勤める研究所にあっては、所外不出しょがいふしゅつではあるが極秘裡ごくひりに、数々の恐ろしい実験がくりかえされていた。
国際殺人団の崩壊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
尼になってもこんな美しい人は決して愛人にして悪感おかんの起こるものではあるまい、かえって心が強くかれることになるであろう、極秘裡ごくひりにやはりあの人を自分のものにしようと
源氏物語:55 手習 (新字新仮名) / 紫式部(著)
彼は、極秘裡ごくひりにこの三事件を並べて検討した。その結果、三事件に共通しているものを二つ発見した。
「しかし武器の調達などではない。極秘裡ごくひりに、河内の楠木どのに会うため渡って来たわけだ」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
極秘裡ごくひりに、後醍醐を暗殺し奉るべきことを、誓わせられたともあるが、しかし徴すべき史証のないことだから、そのへんの機微はたれにも臆測の域を出られぬものというしかない。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)