根府川ねぶかわ)” の例文
藩の徒士かちざむらいのひとりで、市内から早川の方へ寄った下河原にお住いで、一時、根府川ねぶかわ関所番を勤められたこともあったようであります。
と云われても、孝助は手がブル/\とふるえて思うまゝに締らないから、飯島自ら疵口をグッと堅く締め上げ、なお手をもって其の上を押え、根府川ねぶかわの飛石の上へペタ/\と坐る。
熱海へ湯治とうじといっても、この女の仕事と、気性では、そう長く湯につかっているわけにゆかないから、今日でようやく一週間——早くも帰りの旅について、これはちょうど、根府川ねぶかわあたりでの物語。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
根府川ねぶかわ近辺は蜜柑みかんの名所なり。
旅の旅の旅 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
「きっと、万太郎の廻し者が来て、連れ出したにちがいない。そうすると浜の方よりは、根府川ねぶかわの街道へ急いで行ったかもわからない」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はるか南に、走り湯権現ごんげんの常明燈が一点、西の方には根府川ねぶかわ女関所おんなせきしょの灯がポチッと暗の空に見えていて、そこへはどッちも二里ほどずつ離れているさびしい漁村。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
熱海あたみ街道をひきあげて来る途中——かの相良金吾さがらきんごと物別れになり、その揚句に、根府川ねぶかわ番所の役人におかと船手から囲まれて、一味ちりぢりバラバラ、ようやくのこと、小舟で逃げのびた二人は
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)