木槿垣もくげがき)” の例文
暗い闇の中の提灯は、木槿垣もくげがきを背にして立った荻生さんの蒼白い顔と父親の禿頭はげあたまとそのほかの群れのまるく並んでいるのをかすかに照らした。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
その居宅は田鶴見子爵の邸内に在りて、裏門より出入しゆつにゆうすべく、やかたの側面を負ひて、横長に三百坪ばかりを木槿垣もくげがきに取廻して、昔形気むかしかたぎの内にゆかしげに造成つくりなしたる二階建なり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
いやこれは、東雲の光だけではない、置き余る露の珠が東雲の光と冷かな接吻くちづけをして居たのだ。此野菜畑の突当りが、一重の木槿垣もくげがきによつて、新山堂の正一位様と背中合せになつて居る。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)