期待あて)” の例文
熊もつまらなさうだが、それでも何か期待あてがあるやうに歩いて人間をながめる。猿ではじまり、いちばんおつめのところがペルシヤ猫の仲間である。
東北の家 (新字旧仮名) / 片山広子(著)
なあに、おれはあの會計係に逢つて、あの吝嗇坊けちんばう野郎を拜みたほして、あはよくば幾何なにがしか月給の前借まへがりをする期待あてでもなかつたなら、どうして役所へなんぞ行つてやるものか。
狂人日記 (旧字旧仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
正直な敬太郎は憮然ぶぜんとしてありのままを答えた。そうして、とうてい当分これという期待あてもないから、奔走をやめて少し休養するつもりであるとつけ加えた。森本はちょっと驚ろいたような顔をした。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)