最愛いとし)” の例文
あの、船で手を取って、あわれ、生命掛けた恋人の、口ずから、めて、最愛いとしい、と云ってほしい、可哀相とだけも聞かし給え。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
渠女かれは始終、涙と太息ためいきとで聞いてしまつて、さて心の糸のもつれもつれて、なつかしさと切なさとに胸裡は張り裂けんばかり、銀が今の身の上最愛いとしと思ひつめては、ほとんど前後不覚。
もつれ糸 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
殊勝な、優しい、最愛いとしい人だ。これなら世話をしても仔細しさいあんめえ。第一、あの色白な仁体じんていじゃ…………仁右衛門よ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そこだてね、まあ聞かっせえ、客人が、その最愛いとしらしい容子ようすじゃ……ばけ、」
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)