書割かきわ)” の例文
ちょうど殺し場の書割かきわりにでもありそうな所、としの暮らしい、人通りもさッぱり稀です。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お前は多分気づかなんだであろうが、あの石段は芝居の書割かきわりの様に上部程狭くなっている上に、階段の一つ一つも、気づかれぬ程度で、上に行く程高さや奥行きが短く出来ているのだ。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
二三町も行くと、道は隅田川のさびしいどてに出た。対岸の家々の燈火が、丁度芝居の書割かきわりの様に眺められた。真暗な広い河面かわもには、荷足船にたりぶねの薄赤い提灯ちょうちんが、二三つ、動くともなく動いていた。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)