曩日のうじつ)” の例文
曩日のうじつの感夢、おおむね事実と適中するもののごとしと。これ、そもそも予が疑団いよいよ凝結して、氷釈するあたわざるゆえんなり。
妖怪報告 (新字新仮名) / 井上円了(著)
しかしそう思えば、成程思い当る事もないではない、曩日のうじつの彼の愚痴の繰り事や、其怨恨の情は歴然浮び出るのだった。其午後の事であった。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
失恋の彼が苦しまぎれに渦巻の如く無暗に歩き廻った練兵場は、曩日のうじつの雨で諸処水溜りが出来て、紅と白の苜蓿うまごやしの花が其処此処にむらをなして咲いて居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
僕、曩日のうじつ久保田君に「うすうすと曇りそめけり星月夜」の句を示す。傘雨宗匠善と称す。数日の後、僕前句を改めて「冷えびえと曇り立ちけり星月夜」と為す。
久保田万太郎氏 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
これより遙か以南なる釈迦牟尼如来しゃかむににょらい成仏じょうぶつなされたブダガヤの霊場を追想し、曩日のうじつ彼の霊場において誓願を立てたがこの国境までにはまずどうにか無事に着いたかと思うと
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
曩日のうじつ文学の芸術性を擁護して芸術至上の論策を行っていたことと思いあわせれば
昭和の十四年間 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)