新世帯しんじょたい)” の例文
旧字:新世帶
初めから新世帯しんじょたいなどという色めいた、華やかな気分はまるでなかった。家事の手があけばすぐに仕事場へ出て、小まめに栄二の手助けをした。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「そうだったね、つい忘れていた。どうだい新世帯しんじょたいの味は。一戸を構えるとおのずから主人らしい心持がするかね」
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
三十三歳のとき結婚したドヴォルシャークは、新世帯しんじょたいの貧しさを、長くめるには及ばなかった。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
奥もかなり広くて、青山の親戚しんせきを泊めるには充分であったが、おとなから子供まで入れて五人もの客が一時にそこへ着いた時は、いかにもまだ新世帯しんじょたいらしい思いをさせた。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
前からの女中一人を使っての新世帯しんじょたい。邪魔するものは誰もなかった。股野の財産は少しの面倒もなく、あけみが相続した。股野のような守銭奴でないふたりには、思うままの贅沢ぜいたくも出来た。
月と手袋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)