掏摸)” の例文
退屈男は、軽く微笑しながら掏摸る機会を与えるように、わざと女の側へ近よると、懐中ぽってりふくらんでいる路銀の上をなでさすりながら、誘いの隙の謎をかけました。
それは先刻彼から財布と時計とを掏摸られた中年の紳士であった。あたかも狂気した様にポケットからポケットへ手を突込んでは、大変だ大変だを繰返して躍る様な恰好をしていた。
乗合自動車 (新字新仮名) / 川田功(著)