かどわか)” の例文
何物かにかどわかされたとしか考えられぬが、女子供ではあるまいし、大の男がそんなに易々と拐されるのは、ちょっと想像も出来ない不思議な出来事であった。
偉大なる夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
人から可愛がられるのに、こんな山の中へかどわかされて来ているのを、不憫ふびんがる心もいくらかあるのです。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
右大臣家うだいじんけの姫君も、かどわかせと云えば拐して来ます。奉行の首も取れと云えば、——
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
誰かにかどわかされて、こんな山の中へ連れ込まれて、動きが取れないでいるのを、再び世に出してやるのだというくらいな腹はあるらしい。だから、むしろ親切でしてやるつもりが見える。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
かどわかされたんだよ、連れて行ったのは、さきほどお寺を見に来た旅の大工だといったあの人に違いない、それだから茂ちゃんが隠れたのだ、わたしもおかしいとは思いました、訝しいとは思ったけれど
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)