折革包おりかばん)” の例文
女中が脱いである洋服の上着と折革包おりかばんとを持ち、立ちかけた京葉に、「三階のすぐ突当り。」と教えているところであった。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
むこうの方から頭髪を振乱した男が折革包おりかばんをぶら下げたり新聞雑誌を抱えたりして歩いて来るのを見ると、横町へ曲ったり電柱のかげにかくれたりしていた。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
きいろい軍服をつけた大尉たいいらしい軍人が一人、片隅かたすみに小さくなって兵卒が二人、折革包おりかばんひざにして請負師風うけおいしふうの男が一人、掛取かけとりらしい商人あきんどが三人、女学生が二人
深川の唄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
男は道子が口から出まかせに何を言うのかというような顔をして、ウムウムと頷付うなずきながら、重そうな折革包おりかばんを右と左に持ちかえつつ、手を引かれて橋をわたった。
吾妻橋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
実はそれらの相談もして見たいと思って、駒田を誘い出したのであるが、駒田は電車が近づくのを見ると、早くも折革包おりかばんを抱え直して、年寄りのくせに飛乗りでもしかねまじき様子。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)