“所謂(いわれ)” の例文
終生、いや千年の後までも、そのために、彼としては所謂(いわれ)のない、そして拭いようもない憎しみをこの国の人々から受けてしまうものとなった。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
弥太兵衛爺(じじい)に、鐘の所謂(いわれ)を聞きながら、夜があけたら池まで案内させる約束で、小屋へ泊めて貰った処。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
児戯に積む小石の塔を蹴(け)返(かえ)す時の如くに崩れる。崩れたるあとのわれに帰りて見れば、ランスロットはあらぬ。気を狂いてカメロットの遠きに走れる人の、わが傍(そば)にあるべき所謂(いわれ)はなし。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「所謂(いわれ)ない事ではない。父但馬守は、過ぐる寛永七年この方、新たに設けられた幕府の職制、大目付という要職に就かれて、剣道師範役を兼ねてお勤めになっておられる」
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兼好が夙(つと)に、宗良親王を存じ上げていたのは、所謂(いわれ)なきではない。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)