懸想文けそうぶみ)” の例文
それでやはり凧糸で把手とってをこしらえて、げるようにしてありましたところへ、懸想文けそうぶみのような結状むすびぶみくくりつけてありました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
古壁に貼ってある芝居番附だの、懸想文けそうぶみだの、反物たんものの商標などを、顔向けのできない顔のてれ隠しに、眺めているのであった。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
玉鬘のほうへ男性から送って来る手紙の多くなることに興味を持って、またしても西の対へ出かけてはそれらの懸想文けそうぶみを源氏は読むのであった。
源氏物語:24 胡蝶 (新字新仮名) / 紫式部(著)
また彼らは正月に赤色の法衣を着、顔を白布で包んで目ばかりを出し、懸想文けそうぶみを売って歩く。今の辻占売のようなもので、それを買ったものはそれによって縁起を祝った。
賤民概説 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
今朝も今朝、又折り返して、男からの懸想文けそうぶみが、来ていた。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
もとよりも恋は曲者くせもの懸想文けそうぶみ
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)