往復ゆきき)” の例文
日比谷ひびやには公園いまだ成らず銀座通ぎんざどおりには鉄道馬車の往復ゆききせし頃尾張町おわりちょう四角よつかど今ライオン珈琲店コーヒーてんあるあたりには朝野ちょうや新聞中央新聞毎日新聞なぞありけり。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
二階の東南二室の間を、コツコツと往復ゆききしながら、終日大月は考え続けた。けれども一向曙光は見えない。
闖入者 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
良寛さんのすんなりした手と、乾いた地べたの間を、色の糸でかがつた美しい手毬はよい調子で往復ゆききした。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
自然省作の家と往復ゆききして、省作の人柄が、温和なうちにちゃんとしたところがあり、学問とて清六などの比ではない、そのほかおとよさんとどこか気のあったところのあるので
隣の嫁 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)