廣徳寺くわうとくじ)” の例文
新字:広徳寺
「親分方へ正傳寺と言つたが、あれは廣徳寺くわうとくじの間違ひだから、大急ぎで親分方に教へて來ると言つて、半刻ばかり前に出かけましたよ」
錢形の平次と子分のガラツ八は、その頃繁昌した、下谷の徳藏稻荷いなりに參詣するつもりで、まだ朝のうちの廣徳寺くわうとくじ前を、上野の方へ辿たどつて居りました。
「成程、まだいはなかつたのか。——外ぢやない。廣徳寺くわうとくじ前の米屋、相模屋さがみや總兵衞が、昨夜ゆうべ人に殺されたんだとさ」
廣徳寺くわうとくじ前まで來ると、店に入る前に、運よくお杉さんに逢つたのです。——私はお杉さんから皆んな聽きました。
「親分、大變ですよ。下谷廣徳寺くわうとくじ前の藤屋に人殺しがあつたんですが、三輪の親分が行つて掻き廻してゐるが、萬七親分ぢやらちがあきさうもないから、錢形の親分を呼んで來い——と」