幡随院ばんずいいん)” の例文
旧字:幡隨院
はじめさんは「や、揚屋町のやつらが来やがった。」と云って、白柄組しらつかぐみの旗本を見かけた幡随院ばんずいいんの身内のような顔つきをした。
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
「なんて事だい、」とかっぽれはき出して、「それじゃあ、幡随院ばんずいいん長兵衛ちょうべえなんかも自由主義者だったわけですかねえ。」
十五年間 (新字新仮名) / 太宰治(著)
瀬川は、その金で母の養育を金七に頼み、幡随院ばんずいいんの弟子となって名を自貞じていと改め、再法庵に住んで例の歌を作ったというのであるが父の大森通仙の方が詳しく判っている。
傾城買虎之巻 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
武家の暴慢ぼうまんと無道に対して、敢然として立った江戸の町奴。放駒はなれごま四郎兵衛や幡随院ばんずいいん長兵衛の亜流が、その頃ようやく江戸の町を我物顔に横行して、時々は眼に余る所業もするようになって居たのです。
幡随院ばんずいいん一家が出しているのが一艘に、但馬屋たじまや身内で差し立てているのが一艘。同じく江戸にひびいた口入れ稼業かぎょう加賀芳かがよし一家で見まわらしているのが一艘と、特志の土左舟はつごうその三艘でした。
「なんて事だい、」とかっぽれは噴き出して、「それじゃあ、幡随院ばんずいいん長兵衛ちょうべえなんかも自由主義者だったわけですかねえ。」
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
俺が誘いに来る。若い者たちの大喧嘩があるかも知れないのだ。どうもなあ、不穏な形勢なんだ。そこへ俺が飛び込んで行って、待った! と言うのだ。ちょうど幡随院ばんずいいんの長兵衛というところだ。
親友交歓 (新字新仮名) / 太宰治(著)