希望のぞ)” の例文
「悲しみもせず、また奇蹟も行なわず、死を希望のぞんでいた人の様に、従容と縛にこうとは? 一体彼奴あいつは何者だろう?」
銀三十枚 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
わしは心からそうなることをどれほど希望のぞんでいるか知れぬ。しかしわしのこの希望のぞみは容易のことではとげられそうもない。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
死ぬのを希望のぞんでいるものと推し、古沼から毒ある長虫を捕り、先代の病床へ投げ込んで……
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そういう関係になるべく希望のぞんでいたことは争われなかったし、天国の剣をお浦に持ち出してくるよう依頼たのんだのは、確かに自分なのであるから、乾児たちにそう云われてみれば
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
江戸の人々は、一日も早く、世間が平和になるようにと希望のぞみながら、家根へ上ったり、門口に立ったりして、上野の方を眺めていた。長州の兵は、根津と谷中やなかから、上野の背面を攻めていた。
甲州鎮撫隊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
何者か敵に攻め込まれた時、駆け引き自在であろうことを希望のぞんで、昔はそうした風雅な構えをたしかに構えてはいたけれども、このごろになって手を入れて、ならしたようなところがあった。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)