寒鮒かんぶな)” の例文
千住せんじゅの名産寒鮒かんぶなの雀焼に川海老かわえび串焼くしやき今戸いまど名物の甘い甘い柚味噌ゆずみそは、お茶漬ちゃづけの時お妾が大好物だいこうぶつのなくてはならぬ品物である。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「四五日前、大利根おおとねすじへ寒鮒かんぶなを釣りに行くといって、フラリと出かけたまま、今日にいたるまで消息がございません」
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「釣氣狂ひは、暑いも寒いもありやしません。少し時候しゆんは遲いが、寒鮒かんぶなが良いさうで」
そして僕等は諏訪湖からとれる寒鮒かんぶなの煮たのを馳走ちそうになり、酒をも飲んだ。これは一々赤彦君の差図によつたのであつた。僕等は病床の邪魔をしたことを謝しながら、それでも二回まで会つた。
島木赤彦臨終記 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)