家造やづくり)” の例文
池をまわって、川に臨んだ、玉脇の家造やづくりを、何か、御新姐ごしんぞのためには牢獄ででもあるような考えでござるから。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
天孫直系の優秀人であると、自ら称しているにも似ず、「麗人族」の家造やづくりは、日本的でなくて異国的であった。そうしてそれは島国的でなく、むしろ非常に大国的であった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
茅葺かやぶき屋根に簀掻莚すがきむしろのこの家の家造やづくりのとおりに、生地きじそのままであった。この中に人の心をひく美があれば、それこそまったくよそおった装飾の美ではなく、飾らないありのままな生地の美であった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
読者も思掛けなかっただろうと思う……はじめての私が、八郎の故郷のしかも親類の家を認めたのは——およそ紅屋というものを、かつて京大阪の家造やづくりで心得ていたためではない。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)