家屋いえ)” の例文
自分等の家族は以前は巴里の市中に住んだがこのビヨンクウルに住居をぼくして引移って来たということや、この家屋いえもなかなか安くは求められなかったというようなことまで
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
家屋いえだつて蜜蜂飼風情の小舎などとはずんときれいで、果樹園ときたら、いやどうも、あなた方の彼得堡ペテルブルグにだつて、あれだけのものはちよつとやそつとには見当りますまいからね。
家屋いえ彼方かなたでは、徹夜して戦場に送るべき弾薬弾丸の箱を汽車の貨車に積み込んでいる。兵士、輸卒の群れが一生懸命に奔走しているさまが薄暮のかすかな光に絶え絶えに見える。
一兵卒 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
貸付けたる金はその十分一も戻らず、得意先は残り少なに失ひて、これまで通り商業しようばいも営みかねるやうになりしかば、いくほどもなく家屋いえ土蔵くらをも人手に渡してその後は、小さき家に引移り
小むすめ (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)