奈何どん)” の例文
『へえ、妙なことが有れば有るものだ。』と敬之進も不審いぶかしさうに、『それで、何ですか、奈何どんな風に君を呼びましたか、其声は。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
『助けろと仰ると?』お志保のひとみは急に燃え輝いたのである。『私の力に出来ますことなら、奈何どんなことでも致しますけれど。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
奈何どんな先生だらうが、同じ身分の人だらうが、決して気は許せねえ——そりやあ、もう、他人と親兄弟とは違ふからなあ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
奈何どんな港でせうなあ。H君の話では何でも非常に淫靡なとこださうですね——今日は雪舟から歌麿ですかナ。」
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
其時自分は捕まりさうにして、命がけで逃げた。草雙紙は置場所に困つて、どぶの中へ裂いて捨てた。もしの時捕つたら、自分の生涯は奈何どんな風に成つて行つたらう……
貴女は十一二といふ年頃をお母さんの側で奈何どんな風に送つたでせうか。私は全く獨りで——母からも、姉からも離れて——早くから他人の中へ投げ出されたやうなものでした。
「さう言へば、奈何どんな兄さんが被入いらつしやるでせうねえ。」と復たお栄が言つた。
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)