大紋烏帽子だいもんえぼし)” の例文
花の三月、場所は、柳営ノ松の間の廊下というれの舞台で、しかも、扮装は、大紋烏帽子だいもんえぼしという古典的な装いのもとに、殿は上野介へ、あの刃傷に及ばれた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「当日は、必ず大紋烏帽子だいもんえぼしのこと——。」
元禄十三年 (新字新仮名) / 林不忘(著)
高氏は、公式の大紋烏帽子だいもんえぼしすがたを、ぽつねんと、ひとりそこにおかれたままでいた。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きょうは三法師の承祖披露しょうそひろうの祝日である。朝飯後、一睡一浴して、勝家はまた暑くるしい大紋烏帽子だいもんえぼしを身にまとっていた。そして、たてがみ飾りをした馬に乗って城へ向っていた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
例年の大紋烏帽子だいもんえぼしの参賀や式事すがたは見られず、代りに、おちおち正月気分も味わえずに征途へついてゆく武者ばらのあらびたたけごえや軍馬の馬糞が若宮大路を明けくれにうずめている。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)