大府だいふ)” の例文
血をしぼってなしあげた穏密覚え書の一帖も、江戸の大府だいふへ送り届ける頼りはなし、このまま木乃伊みいらとなる肋骨あばらぼねに、抱いてゆくより道はないのである。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
といったという、最期のさまを思いあわせてみても、それは必然に、大府だいふへ届けよという、かれが鏤骨るこつの隠密報告だな、ということは弦之丞にすぐうなずけた。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
江戸を離れたといっても大府だいふのお膝下ひざもとをさることわずか三十六里にたらない地です。蜂屋源之進を初め末輩の田舎役人でも日本左衛門の名を知らないものはありません。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宝暦変ほうれきへんの前後、鴻山と一八郎が、公卿くげの背後に阿波あり、式部や山県大弐やまがただいになどの陰謀の黒幕に蜂須賀あり、と叫んでも、当時誰あって耳をす者もなかったが、ひとり、大府だいふ甲賀組の隠密に
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大府だいふの隠密方、甲賀組の家ばかりがあります所で」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)