夕雲流せきうんりゅう)” の例文
左手さしゅといえど弦之丞の夕雲流せきうんりゅうには少しの不自由さも見えなかった。またたくまに数人の手負ておいが、大地に仆れ、禅定寺の石垣の根へ這った。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
戸ヶ崎夕雲せきうん夕雲流せきうんりゅうなる剣法が、神陰しんかげとひとしく、そもそも白虎びゃっこ和尚の禅機から発足していて、剣気と禅妙の味通、生死同風の悟徹の底から生まれているだけに
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見やがれ! 対手あいて夕雲流せきうんりゅうの使い手だ、てめえがまごまごしている間に、この辺にはまだミッシリと人数が伏せてあると気取ったから、素早く影を隠してしまった
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夕雲流せきうんりゅうの剣のごとく、また、今見る顔のごとく、この人の心もこんなに冷たいのかしら? ……と思ってみると、その動かない顔の鼻柱のわきを、ポロポロと流れてきた涙のすじ
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「はて? ……法月弦之丞と申せば、わしが江戸表にいた当時は、まだ十四、五の美少年で、夕雲流せきうんりゅうの塾へ通っていた大番組おおばんぐみの子息——。どうしてそれが、娘の千絵を存じているのであろう」
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ウム、その心は過分である。いずれ周馬の手紙には、深い魂胆があり、企らみがあるものとは拙者も察しているが、この弦之丞の眼からみれば、およそは多寡たかの知れたあの三人……あはははは、久しく試みぬ夕雲流せきうんりゅう、場合によっては——」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)