塗料ぬり)” の例文
この西瓜の頬っぺた、つまり黄いろい塗料ぬりの跡を留めている両側の扉は、把手や、いい加減に紐で結わえてある蝶番の具合がよくないため、立附けが非常に悪かった。
それが、ドアを撫でたのだ。擦ったのだ。急いで手を引く拍子だったので、案外強い力だったのだろう。指輪が、激しく車体に触って、黒塗料ぬりの表面をちょっと削り除った。車扉に瑕が付いたのだ。
双面獣 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)