地震なえ)” の例文
と、まるで地震なえの地鳴りの次々に聞えてくるように、京都じゅうを揺りかえしていたので、きょうの明け方からはもう全市に庶民の影は見えなかった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さても、お持病の癇癖かんぺきがなせるわざには違いなかろうが、そら恐ろしい事を口にし給うものよ。先頃の地震なえに、心の支柱ささえをとり外し、気でも狂わせ給うたか」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
左右の者へいうともなく、家康はひとりつぶやいて、この大地震なえに耐えるが如く、坐っていた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
地震なえは、揺れるだけ、揺れてしまった方がよいのだ。地底に、空隙くうげきを、余さぬように」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのため、ちょうど官符をうけた諸地の地殻が、幾回となく、地震なえのように鳴動した。天地いちめん、ふしぎな微蛍光をおびた晦冥かいめいにつつまれ、雪かとまごう降灰が、幾日となく降りつづいた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天をおそれざるも甚だしい。民は、ウジ虫じゃない、人間だからね。この人間が、地の底に、怨みをふくむこと久しいと、やがて、地熱になり、地殻が、揺れ出すよ。地震なえだな、大地震がやってくる。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)