咏歎えいたん)” の例文
または歌謡の咏歎えいたんの中に、入って来たほどの感動深い地名でも、時が経ちまた何かの原因があれば、忘れてしまいもすれば横なまっても伝えられる。
和州地名談 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
緋娑子さんの咏歎えいたんをきいていると、それが、『昔々、あるところに』の、あの『大昔』のようにきこえる。
キャラコさん:06 ぬすびと (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
その見るもの聞くものが、異様な刺戟を与え、その刺戟がまたいちいち米友流の驚異となり、咏歎えいたんとなり、憤慨となるのは、また申すまでもないことであります。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
中学生みたいな甘い咏歎えいたんにひたっていることもあるのだし、たかが女学生の生意気なのに惹かれて、家も地位も投げ出し、狂乱の姿態を示すことだってあるのです。
女の決闘 (新字新仮名) / 太宰治(著)
それがいかなる種類の経験であったろうかを、知るだけならばそうかたいことでもない。数多い俳諧の巻々を見渡して、終始咏歎えいたんの目的となっていた問題は限られている。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
故郷の山里で麻を作っている家の者をおもい出したという感動が咏歎えいたんせられたもので、一方には麻の工作が一般に、播種はしゅの時からすでに女の労働であったことを意味するとともに
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それを俳諧だけが残りなく、見渡しり上げて咏歎えいたんしようとしていたのであります。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)