可哀かわゆ)” の例文
しかし外の時、殊に夜になって若い女の美しい顔をして、目を堅くつぶって、ぐっすりているのを見ると、女が際限もなく可哀かわゆい。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
見物は只娘フリイダの、小鳥のさえずるような、可哀かわゆらしい声を聞いて、浅草公園の菊細工のある処に這入って、紅雀のかごの前に足を留めた時のような心持になっている。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
まゝごとの昔しより別れて今ではお前さまお一人をたよりの、お新さま可哀かわゆしとあるは御尤、いひ譯あそばすほどが可怪をかしく、左樣ありてこそ嬉しきお心を喜んで居りまする
花ごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
女の眠りが穏かなだけ、現在を遠く離れているらしく見えるだけ、眠らずにいる自分の苦悩に関係がなくなっているだけ、男は女の可哀かわゆさが増すのである。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
己は小さい時から人に可哀かわゆがられた。い子という詞が己の別名のように唱えられた。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
可哀かわゆがった時にしたようなし方である。「マリイ。約束の事はどうしてくれるのだ。」
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)