卵塔らんとう)” の例文
この寺の墓所はかしょに、京の友禅とか、江戸の俳優なにがしとか、墓があるよし、人伝ひとづてに聞いたので、それを捜すともなしに、卵塔らんとうの中へ入った。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
代々の住職の墓の並んでいる、若葉の樹々に囲まれた一画で、卵塔らんとう型の大きな墓石はまだ新しかった。……又四郎はその前へいって立ち、おじぎをして、ちょっと笑っていった。
百足ちがい (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
お角が人いきれの中からおもてを窓の下にさらすと、そこは回向院の墓地であります。卵塔らんとうと、卒塔婆の乱離たる光景が、お角の眼と頭とを暫しながら、思いもかけない別の世界に持って行きました。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)