南蠻なんばん)” の例文
新字:南蛮
「ところでもう一つ、金田屋は拔け荷を扱つて居ると、もつぱら世上の噂だ。此家こゝ南蠻なんばん物の鐵砲などはありやしないか」
南蠻なんばん物にはよく効く吐劑がある。南の方の國で取れる吐根とこんなどはその一つだが、なか/\手には入るまいよ、——だが、こいつは内證ないしよにして貰ひたい。
「尤もなことぢや、紛失した品と申すのは唐土もろこしで言ふ夜光の珠、南蠻なんばんではこれをダイヤモンドと申すさうぢや。大きさは銀杏いてふの實ほどもあらうか、まことに見事なものぢや」
この夜光の珠は、日本に類がないばかりでなく、唐天竺からてんぢくから南蠻なんばんにも珍らしいもので、これを一つ賣れば、南蠻紅毛の國では、何千兩、いや/\何萬兩にもなるといふことです。
これは恐らく南蠻なんばん物であらう、——ところが、暫らく後で發病した、この家の主人永左衞門殿の呑んだのは、それと全く違つたありきたりの、石見いはみ銀山鼠捕り、つまり砒石ひせきぢや。
南蠻なんばん人からいろ/\の術を教はつて、いつの間にやら修驗者になりすました樣子です」
尤もあの月見の晩は、吾妻屋の方にも惡企わるだくみがあつた。最初果し合ひに持出した徳利には、二本とも南蠻なんばん物の毒藥を仕込み、大井久我之助は何方を取つても助からないやうに仕組んだのだ。
あとで調べると、南蠻なんばん仕込みの恐ろしい毒が入つて居たさうですよ。その毒藥は江戸中の生藥屋にも滅多にないが、長崎屋庄六は少し持つて居るんださうで、今朝三輪の萬七親分に縛られて行きましたよ
銭形平次捕物控:167 毒酒 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)