卓犖たくらく)” の例文
いにしへより卓犖たくらく不覊ふきの士、往々にして文章を事とするを喜ばず、文字の賊とならんより心中の文章に甘んじたればならむ。
山庵雑記 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
しかし、その得意とするベートーヴェンの演奏などになると、精緻極まる演奏のうちに、強靱きょうじん卓犖たくらくなナポレオン的な力が漲る。真に驚くべき演奏と言っていい。
それが何かの機会はずみ浮浪さすらいの旅役者の手に移り、海を越えて、この女興行師の手に渡って、珍しい絵看板同様の扱いを受けつつ、卓犖たくらくたる旅絵師の眼前に展開せられたものとしたら
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
清朗卓犖たくらくな、実に品の良い演奏で、ベートーヴェンの晩年の境地がさながらに胸を打つ。
引力によりてあひ繋纏けいてんする物質の力、自由を以て独自卓犖たくらくたる精神の力、この二者が相率ひ、相争ひ、相呼び、相結びて、幾千幾百年の間、一の因より一の果に、一の果より他の因に
国民と思想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
これほど卓犖たくらく高遠なベートーヴェン魂を把握した演奏は滅多にあるものでない。