加波山かばさん)” の例文
「この男は加波山かばさん事件の生残りじゃ。今でも、え荷物(国事犯的仕事。もしくは暗殺相手の意)があれば直ぐに引っ担いで行く男じゃ」
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
加波山かばさん事件のときの遺物だそうじゃ、大井さんもそれ以上の話はせんかったが、こいつはうまいと思ったからおれはすぐ素知らぬ顔をしてかえってきた、——貴様
風蕭々 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
旧友は伊沢道之いざわみちゆき加波山かばさんの暴動の時には宇都宮にいたがために、富松正安等とまつまさやすらと事を共にするのやくを免かれることができたが、群馬の暴動は免かれることができなかった。
雨夜続志 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
嬰女あかごのお襁褓むつしてある稲田の草庵の軒先からは、いつもうす紫に霞んでいる筑波の山が見えた。窓からは、加波山かばさんの連峰が見え、吾国山わがくにさんひだが、澄んだ日には、あきらかに手にとるように見える。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)