処士しょし)” の例文
椽側えんがわから拝見すると、向うは茂った森で、ここに往む先生は野中の一軒家に、無名の猫を友にして日月じつげつを送る江湖こうこ処士しょしであるかのごとき感がある。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「まあせかせないで下さい」と七十郎は盃を取った、「私のような処士しょしは、なかなかこういう御馳走にはありつけませんからね、——一つ受けてくれますか」
さきの陳達といいこの二者といい、いずれも元は江湖の処士しょしや良民だった者だろう。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
処士しょしの分際として国老を問責するのは無礼でもあり、その仕方は僣上せんじょうすぎる、というのである。
処士しょしである七十郎が決行しようとしたのだ、それが、小野の家従に裏切られて繩にかかり、獄につながれ、吟味らしい吟味もされずに打首となった、打首のうえ死躰をここへ捨てられたのだ