兄者人あにじゃびと)” の例文
京子は十二年前に勘当された加十に兄者人あにじゃびととしてのナジミがないから、他人に財産をとられるような怒りや呪いがあったかも知れません。
俯目ふしめ兄者人あにじゃびとのほうを見てありましたところ、母うえが着せてあげた赤地錦あかじにしき小袖こそで萠黄縅もえぎおどしよろい、太刀のこじり、いつまでも、石のように、ひれ伏してありましたが
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なんだか兄者人あにじゃびとのような気がすると前置きをして、それから自身の半生を嘘にならないように嘘にならないように気にしいしい一節ずつ口切って語りだしたのである。
ロマネスク (新字新仮名) / 太宰治(著)
それでもなかなか捗取はかどらず、七日なぬかも経ったので、あとに残って附添っていた兄者人あにじゃびとが、ちょうど刈入で、この節は手が八本も欲しいほどいそがしい、お天気模様も雨のよう、長雨にでもなりますと
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)