偶然ゆくりなく)” の例文
「すべて歓楽の裏一重には悲哀かなしみがあるとか申しますが、その悲哀が偶然ゆくりなくあなたを襲うたのでござりましょうよ! おや、夜鶯ようぐいすが啼いております」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ある日お杉は偶然ゆくりなく、宿下りをした召使の口から、市中の恐ろしい噂を聞いた。それは「夫婦めおと斬り」の噂であった。
柳営秘録かつえ蔵 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
偶然ゆくりなく耳に致しましたれば、鬼王丸めを即座にばくし、貴意にお任せ致したく存じここに控えさせましてござります。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この時、忽然こつぜん弓之進は、以前まえかた死んだ葉之助が、「代りが来るのだ! 代りが来るのだ! 次に来る者はさらに偉い!」と末期いまわに臨んで叫んだことを偶然ゆくりなくも思い出した。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そのため二人、偶然ゆくりなく話し合う事が出来たのであった。やがて日が暮れ夜となった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)