推参ぞっ、雑人ぞうにんども。——柴田修理亮勝家しゅりのすけかついえの身に、おのれらの槍が立とうや。鬼柴田の名はあだには持たぬぞ。——われに立ち向わん程の者は、小川土佐(佐平次祐忠すけただ)か木下美作きのしたみまさか
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、本丸の上段、毛皮のしとねに、どッかりかまえた修理亮勝家しゅりのすけかついえは、その年、五十三の老将である。こよいも、岐阜ぎふ侍従じじゅう信孝のぶたかからの飛状ひじょうを読みおわって、憤怒ふんぬおもてにみなぎらしていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)