熱いのを、大きな五郎八茶碗ごろはちぢゃわんでさらさらと掻食かっくらって、掻食いつつ菊枝が支えかねたらしく夜具に額をあてながら、時々吐息を深くするのを
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が、彼の妹は時々赤児をあやしながら、愛想あいそい応対をするだけだった。僕は番茶のしぶのついた五郎八茶碗ごろはちぢゃわんを手にしたまま、勝手口の外をふさいだ煉瓦塀れんがべいこけを眺めていた。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
棟梁三次は五郎八茶碗ごろはちぢゃわんでぐいぐいとあおっていた。初めにさッと赤く顔にでた。そのときは見るもの聞くものことごとくうれしげなのだ。そこまでが日頃の「一ぱいつける」限度なのであろうか。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)