乳母おも)” の例文
皆手に手に張り切つて発育した蓮の茎を抱へて、廬の前に並んだのには、常々くすりとも笑はぬ乳母おもさへ、腹の皮をよつてせつながつた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
なお、「悔しくも老いにけるかも我背子が求むる乳母おもに行かましものを」(巻十二・二九二六)というのもある。これは女の歌だが、諧謔かいぎゃくだから、女はいまだ老いてはいないのであろう。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
で御座りますが、郎女のお行くへも知れ、乳母おももそちらへ行つたとか、今も人が申しましたから、落ちついたので御座りませう。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
が、家庭の中では、母・妻・乳母おもたちが、いまだにいきり立って、そうした風儀になって行く世間を、のろいやめなかった。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
皆手に手に、張り切って発育した、蓮の茎を抱えて、いおりの前に並んだのには、常々くすりとも笑わぬ乳母おもたちさえ、腹の皮をよって、切ながった。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
が、家庭の中では、母・妻・乳母おもたちが、今にいきり立つて、さうした風儀になつて行く世間を呪ひやめなかつた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
多くのかたごとを、絶えては考え継ぐ如く、語り進んでは途切れ勝ちに、呪々のろのろしく、くねくねしく、独り語りする語部や、乳母おもや、嚼母ままたちの唱えることばが、今更めいて、寂しく胸によみがえって来る。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)