中秋ちゅうしゅう)” の例文
空には中秋ちゅうしゅうの月がえて、氷のような月光が独り地上を照らしている。ここに考えることは人生への或る涙ぐましい思慕の情と、或るやるせない寂寥せきりょうとである。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
四十歳ぐらいの主人がにこにこしながらはいって来て、今夜は中秋ちゅうしゅうであるから皆さんを招待したいという。私たちは勿論承知して、今夜の宴に招かれることになった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
夕飯後ゆうめしご、ランプがついて戸がしまると、深い深い地のそこにでも落ちた様で、川音がます/\耳について寂しい。宿からはぎの餅を一盂ひとはちくれた。今宵こよい中秋ちゅうしゅう十五夜であった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)