三枝さえぐさ)” の例文
煙草を銜え、飛行服のバンドをめ直し乍ら、池内いけうち操縦士が、折から発動機エンジンの点検をえて事務所に帰って来た、三枝さえぐさ機関士に訊ねた。
旅客機事件 (新字新仮名) / 大庭武年(著)
三枝さえぐさ新三郎、長坂釣閑、曽根内匠、曽根喜兵衛、三枝勘解由左衛門、すなわち足軽大将は、やや離れて坐っていた。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「おれは昨日帰った、秋田と三枝さえぐさ安部あべが来て、三人で夕飯をべた」と十兵衛は云った、「そのときすっかり聞いたが、おれはすぐには信じられなかった」
あだこ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
土曜日のやすみに寄宿舎から二人乗りの人力に友達と二人で乗つて銀座の関口や三枝さえぐさへ毛糸だのリボンだの買ひに行き、帰つてくると二人でその車代を払つて
徒歩 (新字旧仮名) / 片山広子(著)
三枝さえぐさ庄吉は近代日本文学の異色作家、彼の小説の広告のきまり文句で、然し彼は私の知る限りに於ては、小説を書く以外にはつぶしのきかない日本唯一の作家であつた。
オモチャ箱 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
そんなことを云うようになったが、精之助はその前後から自分でもそのつもりになり、三枝さえぐさの叔父を訪ねてあらましの事情を『みよし』のことはべつにして——話した。
契りきぬ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
すなわち三枝さえぐさ勘解由の屋敷で、グルリと取り廻わしたは高い土塀、その土塀の東南の角へ、ボッと火光が射したかと思うと、ユラユラと一本の火柱が、土塀に添って北の方へ
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
三枝さえぐさという家へ養子にいったひとでね、父の弟に当るんだが、近いうちに来るそうだから接待を頼むよ、——酒好きでべつにむずかしいことはないんだ、肴に註文があるけれども
契りきぬ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
信玄の言葉に「はっ」と返辞いらえて膝を進めたのは庄三郎であった。珍らしく今日は出仕して、真田源五郎、三枝さえぐさ宗二、曽根孫二郎というような日頃仲のいい同僚と共に座中の斡旋をしていたのである。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)