一節いっせつ)” の例文
思わず寒さに胴顫どうぶるいすると同時に長吉は咽喉のどの奥から、今までは記憶しているとも心付かずにいた浄瑠璃じょうるり一節いっせつがわれ知らずに流れ出るのに驚いた。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
頭を打たれる前にまだ一節いっせつありますから、まずそれから御報知しようと思います。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この一節いっせつに思いあわせたのだった。
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
清元きよもとの一派が他流のすべからざる曲調きょくちょうの美麗を托した一節いっせつである。長吉は無論太夫たゆうさんが首と身体からだ伸上のびあがらして唄ったほど上手に、かつまたそんな大きな声で唄ったのではない。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)